虹がでたなら

説明がしづらい人のブログ。

心を解きほぐす料理@アラジン 広尾

スージー氏に誘われて広尾の『レストラン アラジン』へ。

氏はONでもOFFでも饒舌だけど、彼がくれたメールのアラジンへの強い思い入れある長い文章より、「川崎シェフから『どうしてますか?』と電話があった」という一文に、2つの意味で行かねばと思わされた。
ここ数年、あることあることないこと、色々言われてきているもんなぁ。

 

当日、少し遅れて到着すると、入口のウエイティングスペースで、スパークリングを片手にシェフと談笑する氏が見えた。
お互いに尊敬の念を持つ人たちの間に流れる空気は清々しい。

あくまでも軽く軽く。すべては泡の日々の如く。
本当のことは、何も知らないのだけど。

 

フルートグラスが空き、席へ移動。

川「メインは、ローストと煮込みどちらにします?」
ス「おまかせします」
私「私は、ローストにしようかな」
ス「どちらがお薦めですか?」
川「煮込み……かな」
私「はっ! 私、こういう時、いつもローストを選んで後で、『煮込みにすれば良かった!』って思う確率が6割以上なんです。煮込みにします!」

なんてやりとりがあった。

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12年のシャブリと共に迎える一皿目は、「カリフラワーのババロアブロッコリーのヴルーテ、キャビアを添えて」。
野菜の優しい香りをメインに、キャビアがアクセントをつける。

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様々な食感を味わえる、「帆立貝とセップ茸のチリメンキャベツ包み蒸し」。
レモンソースが爽やかな隠し味。

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蟹味噌の甘さとほろ苦さのハーモニーがたまらない「毛蟹のリゾット」。

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「平目とセップ茸のソテー、 銀杏のピュレ、ラタトゥイユ・ソース」。
平目もそうだけど、セップ茸ってこんなにふっくらして美味しいんだなぁ。

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なんと、メインを少しずつ2品出してくれた。「鹿のフィレのロースト」。
甘い脂の香りが素晴らしい。
画像の奥にあるパスタは「煮込みに添えて食べてみて」とのこと。

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写真がアップになったのでデカく見えるけど、実は小さなココット鍋に入った「鹿のすね肉赤ワイン煮」。
こちらにもふんだんにセップ茸が使われている。
とても香り豊かで滋味深い。

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デセール。「柿とパッションフルーツスープ仕立て ヨーグルトシャーベット添え」。
さっぱりふんわりと大人の味。

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「リンゴの薄焼きタルト、バニラアイスクリーム添え」。
これは完璧なスイーツ。美しさだけではなく、厚さが本当に絶妙。

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コーヒーと共にプティ・ブルール。
ドライフルーツも自家製。片面にシロップを塗ってオーブンで数十分(だったかな?)焼いて作るそう。

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約5時間に及ぶ長い長いランチで、私たちはそれそれは沢山の面白く、ほろ苦い話を共有したのだけど、やはり誰にでも話してもいい話は極一部しかない。

誰かにとっては感動的で、素晴らしく価値のある事象であっても、他の誰かにとっては、ただ辛酸を舐めるような、一刻も早く思い出の彼方に消え去ってほしい出来事だったりもする。

上手にぼやかして書けるかなーと思ったんだけど、やっぱ無理だわ。
詳しく聞きたい人は、是非会った時にでも訊いてください(苦笑)。
意外にイイ話、いっぱいあるよ。

 

人は歳を取るたびに個性が濃くなっていくだけだと私は思っているのだけど、ニコニコと話をする、ずっと年上の川崎シェフから、常に新しさと軽やかさが漂ってきて、とても居心地が良かった。

「そうだ。今日の記念に二人の写真を撮りましょうよ。」そう言って、私はiPhoneで写真を撮った。
リラックスしたとてもいい笑顔のふたり。
今、期間限定でスージー氏の食べログのトップ画像になっています。

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大人になると、新しい場所に出掛けていけば、自分のバックボーンや天望について話さねばならない機会が増えるけど、シンプルに話せば話すほど、話した相手との関係性よりも自分自身のことがよく解る。

 

これはきっと勝手な解釈なのではないかと思うのだけど、芸術家(アーティスト)とは、いとも簡単に隣にいる人の運命を変える。
今回、その瞬間が訪れるのを感じることが出来た。

 

その感覚を上手く説明出来ないのだけど、言い換えて言うのならばこういうことだ。

もし、最期の晩餐を自分で選べるのならば、私は「アラジン」に訪れたい。