「東京大学のボリス・ヴィアン──『うたかたの日々』を読む」を見て
今気付いたけど、このタイトル、『東京大学のアルバート・アイラー』にかけてるのか(遅)。
8/31に応募したトークショウに行った。
当選結果が分かるのはその前の金曜夕方だったけど、早く応募したし、行くつもりでほぼ毎日(3連休中も)深夜まで仕事して頑張ったんだけど、やっぱり遅刻になってしまった。
遅れてるってのに、ついつい本郷通りにあるこの店の写真を撮ってしまったよ。
意味もなくこの店の画像を送られる経験が何度かあり、ちょっと気になっていたので「ここか!」と少し和んだ。
東大本郷キャンパスって行った事ないなーって思ってたけど、行ってみたら何度か来ていることを思い出した。確か菊地×南デュオもここだったような気もするし、EさんとKさんの結婚披露パーティもここだった。完全に忘れている。
ともかく、法文2号館が何処か分からなかった。
守衛さんに道を訊ねてようやく法文2号館に入ったが、時間をかなり過ぎていたので案内の人がおらず、軽く途方に暮れそうになったところで、ひとりの青年が現れたので訊ねると、「んー。案内しますよ。」と誘導してくれた。
「ところで、今夜、2大教室で何があるんですか? 菊地成孔さんと野崎さん? いいですね! 僕、毎週菊地さんのラジオ聴いてるんですよ! ……ここです。じゃぁ、楽しんで!」
青年に笑顔で見送られると、何だかもうここにいて少し話したい気持になったが、「ありがとう」と言って講義室に入ると、そんな気分はすぐに消えた。それどころか、遅れてしまったことを激しく後悔した。
話題は、「フロイト的見地から見る『うたかたの日々』、お手上げ。つまりこれは“少女漫画的存在”である」という話題になっていた。
係の紳士が開けてくれた席を断って、私はちょっと歩いて座りたい席にすわったのだが、丁度前に座っていたマダムが取っていたメモのボリュームと、冒頭に流れた映画の予告編をざっくり差し引いても15分は経っているようだった。
菊地、野崎両氏の話を聞きながら、翻訳家かつジャズミュージシャンであった人と暮らした日のことを思い出した。あの頃はこんな話ばかりをして過ごしていた。菊地さんが「これ解りますかね」と心配したことが全部解るのは当たり前として、野崎氏の話もすごくスッと入ってきて、清々しい気持ちになった。しかし、清々しい気持ちになったと同時に、新しいことを知った瞬間の衝撃みたいなたいなものを感じる機会が減ってしまっているのだと少し悲しい気持ちになった。
映画の宣伝の一部である筈のイヴェントだったが、中盤はフランスのイメージを落とす話の連続。でも、所謂有名人のコメントとして映画「ムード・インディゴ 〜 うたかたの日々」に載せられた菊地さんのコメント
文学側も映画側も音楽側も納得の映画化。ビョークのデビューPVが永続する懐かしさと斬新さ。
昨今のフランス映画界の充実を代表する永遠に新しい古典。
に付随するふたりの対話はとてもわくわくさせてくれたし、この映画を観る価値が十分にあると感じさせてくれた。
また他方でこの作品はデューク・エリントンの映画と捉えることも出来るらしく、彼をどの程度理解するかによって、意味が大きく変わるようだ。
例えば、『蓮』の解釈。文壇と楽団で持っている知識のベースが違う。
Duke Ellington, Lotus Blossom (Trio) (Strayhorn ...
「全ての音楽的ジャンル、例えばダンスと非ダンス、ポルティックとアンチポルティックなど、それら一つ残らず超越して、かつ賞賛されているのはデューク・エリントンだけ」。
映画『うたかたの日々』は、そんなエリントンの音楽を、ノイズリダクション、リマスタリング技術をフルに活かして、20年代から60年代までの音楽を同音質で並べることによって、時代性が全く分からない、“無時代映画”になっているらしい。そこも気になる。
音楽家としてのヴィアンの作品の中で、「《 Je Bois》がいい」と言う話で、意見が一致していた。
Boris Vian - Je Bois - YouTube
菊地さんに興が乗って、こういう話の流れになる瞬間が本当に好きだ。
「今日は映画を観ましょうって会じゃないので……、あれ? そういう会なのかな? 冒頭で映画の予告編を流したってことはそうなのかな? どっちかな? や、『是非映画は観ていただきたい』ってことで……ネタバレですが」
ここ最近のフランス映画には自力を感じる、と言う話の流れで、映画『最後のマイウェイ』は素晴らしいと言う話になった。
かなり熱く語っていたので、行ってみたいが、もう行けるところでは、10/19〜11/1までのシネマジャック/ベティ(関内・黄金町)か、11/9から川崎アートセンター(新百合ケ丘)しかない。うーん忘れそう。
あと、『タイピスト!』も激推しされてた。観なくては。11/2からキネカ大森か……。
ヴィアンの文芸作品は、嘘半分、本当半分だと言うのは周知の上で、「この文章変だよ!」って思うところが、“フックを作っているのか、間違いなのか、こっち(翻訳者)の理解が足りないのか”、その三択で悩まされる。
この話を聞いた時、菊地さんが昔ライヴのMCで「アンディ・ウォーホルは、一生嘘しか言わなかったそうですよ。尊敬してます!」って言ってたことをふっと思い出した。
ハツカネズミ問題に関しては、映画を観ての楽しみに、という話だった。
フランス語だからこその話題になって、野崎氏が少しまとまったセンテンスのフランス語を話した時、あぁ、なんて日本人の話すフランス語は聞きやすいんだろう、としみじみ思った。
トークショウが終わると、何だかちょっと元気になっていた。音声によるリズミカルで高速な情報伝達は、細胞を活性化させる効果がある気がする。ここ最近で聞いたトークショウや座談会の中で、一番面白かった。
書こうとしたことの半分くらいしか書けなかったけど、これを読んだら思い出せる程度までは書いたからよしとする。